まちの本棚だより

2024.12.24 【レポート】石巻一箱古本市2024 text by かつ

2024年10月5日(土)第13回石巻一箱古本市が開催されました。
今年は42店舗の一箱店主さんが参加し、過去最大の規模となりました。
石巻のまちなかではさまざまなイベントも同時に開催され、天気にも恵まれ多くの方にご来場いただけました。

今年は会場に新たにアイトピア通りのショップ「kyuu」さんや陶器屋「尾張屋」さんも加わり、石巻まちなか商店街のお店の軒先など合計9箇所で展開。
石巻一箱古本市が大切にしているまちをめぐって、まちを歩いて楽しむ古本市を体現できたと思います。



今年のスタンプラリー制作はハンコ版画家でありエッセイストのあまのさくやさん。
岩手県紫波町で「本と商店街」というブックイベントを企画しているあまのさんと、石巻一箱古本市チームが知り合ったことで今回の制作につながりました。
あまのさんが制作した6色の朱肉をつかった多色刷りのスタンプは、押し始めるとどんな図柄が完成するかワクワクした期待を高めてくれます。
こちらはとても好評で、アナログなスタンプラリーのよさを体験できるしかけとなっていました。

スタンプラリーを完成させた来場者には景品として石巻一箱古本市2024オリジナルのしおりとポストカードがプレゼントされました。しおりとポストカードのアートワークは画家 福田美里さんによるもの。

IRORI石巻会場では様々な出店者さんが集まったマルシェイベント「Lovely Life Line」が同時開催されました。フードやドリンクやワークショップなどがおこなわれ、お隣の「現在文学研究所/口笛書店ANNEX」ではまちのあの人、この人が、この日のためにZINE創りに挑戦。とてもクオリティの高いZINEが並んでいました。

同時に現在文学研究所では、野山で拾ったコケや種、海で見つけた漂着物、はたまた暮らしの中でゴミとして捨てられるモノたちを、ちいさな箱にタカラモノのように収蔵する「ちいさな博物館展」を開催しました。ちいさな箱の世界に参加者たちは魅了されていました。

この春から写真家の志賀理江子さんのスタジオが石巻に誕生しましたが、当日はオープンスタジオを開催、小さな展示とライブラリーを公開しました。

会場のひとつシアターキネマティカでは軽トラでテンガロン古書店が出店。 昭和の映画パンフレットや関連書籍も人気でした。

今年の一箱古本市、常連の出店者さんと今回初参加の出店者さんと半分半分くらいの割合で参加いただきました。本に関わる出店者さんや読書会などを企画しているグループでの参加、会場には芥川賞作家の佐藤厚志さんのすがたも。幅広い参加者の創意工夫の詰まったヒトハコを眺めるだけでも、時間が足りないというくらい見応えのあるものでした。

本を片手に多くの人が各会場を行き交い、まちはひとであふれました。そしてあっという間に終了時刻に。16時の販売終了と同時に出店者さんから、一箱古本市の感想などを書いてもらったアンケートの回収をおこない、17時からは表彰式が旧観慶丸商店でおこなわれました。

もっとも本を手渡した出店者に贈られる「石巻まちの本棚」賞は、観慶丸本店前に出店していた「本と雑貨 コピルアク」さんが選ばれました。その販売した本の冊数はなんと74冊でした。

つづいて石巻一箱古本市のはじまりのきっかけをつくった一箱本送り隊賞のプレゼンテーターは、一箱古本市の発案者南陀楼綾繁さん。
南陀楼さんが選んだ一箱はシアターキネマティカに出店していた「裂け目」さんでしたが、表彰式は欠席でした。表彰式出席者に賞品を手渡すというポリシーのもと、次点で選ばれた「くろうんも」さんが賞品を受賞しました。積極的で適度な声がけで会場を盛り上げていた「くろうんも」さんの一箱もとても個性的でした。

そして主催者であるISHINOMAKI2.0賞はプレゼンテーターの松村豪太さんが選定した「あさぎ書房」さんに決定しました。地域の芸術祭「Reborn-Art Festival」から生まれた食品が景品でした。

石巻地域では今年大型書店が次々と閉店を決め、本を扱うお店が減ってきているなか、こうした小さな本の試みが多くの人を集め、関心を持たれていることがとても大切なことのように思います。


そして毎年の傾向ですが、オリジナルのZineを販売する一箱店主さんも多く、本を取り巻く文化に自由で柔軟な創作の場が加わったような感覚です。
参加者のみなさんのオリジナル出版物から次々に品切れになっていくことも印象的でした。

石巻一箱古本市は助っ人さんと呼ばれる運営ボランティアとともに各会場の運営や、事前準備をしています。
今年も多くの助っ人さんに集まっていただき、地元高校生をはじめ幅広い世代で取り組みました。感謝申し上げます。
来年も助っ人募集していますので、一箱古本市の運営にご興味ある方はぜひ気軽にご参加ください。

毎年幅広い出店者さんが集まる「石巻一箱古本市」ですが、今回は過去最大数の出店者さんとともに開催しました。
ここ数年の傾向として石巻/女川/東松島といった石巻圏域、仙台をはじめとした市外からの出店、そして遠くは千葉や岩手などの県外からの出店と、この3者がほぼ同じ割合で応募いただいています。
「石巻一箱古本市」の広がり方の可能性を示すよい傾向だと思っています。


石巻一箱古本市がこれからも本を通じた楽しいコミュニケーションの場所を生み出し、本の文化を育むことにつながることを願っています。
来年も石巻まちなかで本を通じてみなさまに再会できることを楽しみにしています。

写真:近江志乃
レポート:勝邦義

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