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カテゴリー:まちのこと

ブックレビュー「シビックプライド」

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「シビックプライド」
伊藤香織+紫牟田伸子/監修
シビックプライド研究会/編者
宣伝会議/出版社
→購入はAmazonから

シビックプライドという言葉がある。郷土愛とは違うまちにたいするある種の当事者意識である。都市の郊外化や人口減少による空洞化が進むなか、都市間競争は都市の差別化をはかることに重点がおかれるようになった。しかしながら都市の景観を語る時には美しいことや醜悪が問題になり、経済効果をばかりを持ち出すと、そのまちに生きるひとたちを置き去りにした議論に陥りやすい。シビックプライドという言葉が必然的に含む市民参加というキーワードが非常に重要な役割を演じることになったのは、そうした都市に関わる指標や評価軸が置き去りにしてきた人という資源にフォーカスできるからである。

まちの魅力をつくるのはそこに住むひとたちであり、そこに関わるひとたちである。市民の定義も多様化している震災以降の日本の状況のなかで、まちにかかわる多くのひとたちを巻き込み、彼らの広い意味での市民としての自負や誇りの再生をどうやって達成していくかが課題になってくる。

まちに関わっているという意識を醸成するような手法やアイデアが日本各地には求められているなか、いままでの都市論がもつ外からの目を意識したものではなく都市の内側から育むようなイメージをシビックプライドという言葉は喚起させてくれる。

本書はアムステルダムやニューキャッスルなどヨーロッパを中心とした都市の良質なコミュニケーション戦略事例がオールカラーの紙面に収められている。振興開発地区の整備をするにあたって最初にオープンスペースを整備し、開発側と市民とのコミュニケーションの場として進めるプロセスをとったハンブルグ・ハーフェンシティや、何十回とワークショップやイベントを経て市民の理解を獲得し、アートを基点にした都市再生を成し遂げたニューキャッスルなどが紹介され、ハード中心の都市開発からソフトを介したコミュニケーションに移行した新しい切り口の都市戦略の可能性を提示するものになっている。

Text:勝邦義

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