先月10月に開催されていた「夏葉社フェア」
大好評のうちに終了いたしました。
みなさまお越しいただき誠にありがとうございます。
出版社を立ち上げ丁寧につくり上げた島田潤一郎さんの珠玉の本たち、
ひとりでも多くの人に届いてほしいと思いをこめて、
石巻まちの本棚運営スタッフでブックレビューを書いてポップにしていました。
ここではそのブックレビューを大公開しちゃいます!
気になる本があればぜひお近くの本屋さんにご用命ください!
「小さなユリと」
黒田三郎の詩は、なんとも言えないやさしい言葉で書かれている。
父親である黒田と小さな娘ユリとの生活、そして病院にいる妻を見舞いにいく。
酒を飲み、小さなユリと暮らし、会社に遅く出社し、多くの勤め人が出勤したあとの落ち着いた住宅地を歩く。
そんな日常を過ごすことに、どこか申し訳なさや
恥ずかしさを感じた言葉。
孤独なのか幸福なのか、自己嫌悪なのか自己肯定なのか、様々な気持ちのあいだをゆれ動く感情。
それなのに言葉は穏やかだ。
そんな詩集を読んでいると自分自身も起伏があったとしても、私から発せられる言葉だけは穏やかでありたい。そして心穏やかに過ごしたいと思うのである。
(かつ)
「レンブラントの帽子」
日々の生活の中で,「あー,人間って何なんだろう 」と思うことがありませんか。
特に,何ともしようがないのが,自分。
うぬぼれや傲慢,妬みや懐疑心。そんな自分に気付いて,さらに落ち込んでしまうことも…。マラマッドが描き出した人物を見ていると,その暗い部分すら,愛おしく感じられてきます。
夏葉社で最初に作られた本。この本が出版されるまでの島田さんの熱い思いと忘れがたい人達との出会いが,「あしたから出版社」(晶文社)にたっぷりと書かれています。本がこんなに心を込めて作られていくのかと驚かされます。まだの方は,そちらも合わせてどうぞ。
(koma)
「昔日の客」
~残念ながら,その時代にいらっしゃれなかった皆様,父の魂が込められた,この1冊が「山王書房」でございます。
いつでも何度でもいらして下さい。~
息子さんが書かれたあとがきです。
文学者たちに愛された,東京の古本屋「山王書房」の店主関口氏の随筆集。
ここでは,親しくされた方との交流と別れが,風呂敷いっぱいの蜜柑やら,もぎとってはふところに入れた柿やら,落ち葉やどんぐりなどと一緒に豊かに語られています。
人とのあれこれに疲れたとき,何度でも開きたくなる美しい一冊です。
どれも好きだけど,「大山蓮華の花」と「洋服二題」がいちばん気に入っています。
(koma)
「ガケ書房の頃」
京都の本屋さん「ガケ書房」店主の山下賢二さんの著書。(現在は移転を機に「ホホホ座」と改名)
山下さんの子供時代から「ガケ書房」を始めるまでの道のり、「ガケ書房」経営の毎日のこと、閉店、「ホホホ座」のことなどなど、これでもかというくらい正直に書かれています。
以前、本屋さんを営まれていたまちの本棚の大家さんは、「私にとっては、この本は『実用書』に思える」とおっしゃっていました。
この本に大いに刺激を受けながら、まちの本棚のお店番をしています。
(店長)
「さよならのあとで」
この本は1編の詩で構成されています。
発行人夏葉社の島田さんが、ひとり出版社を
たちあげるきっかけとなったと伺う、大切な従兄の突然の死。
叔父叔母のために何ができるか。そんな強い思いから、
この本はうまれた。。
もしかしたら、読むことに少しばかりの勇気がいる
かもしれません。私自身がそうでした。
読み終えて湧いてきた心もちをあらわすとするならば、
大切な人たちへの「一緒にいてくれてありがとう」でしょうか。
どうぞお手にとっていただければと思います。
(ゆめんぼ)
「移動図書館ひまわり号」
まだ「図書館」という建物が日本には一般的ではなかったころ、
東京日野市ではじまったたった1台の移動図書館は、日本中の図書館のあり方に影響を与えた。
日本の図書館の夜明けの物語。
この物語は、図書館だけではなく、すべての公共施設のための手探りの物語でもあるんだと思った。
今だからこそ、読んで欲しいそんな1冊。
夏葉社さんが復刊してくれなかったら出会うことのなかった本でもあります。
(かつ)