まちの本棚だより

カテゴリー:いしのまき本の教室

2021.10.30 【レポート】第13回 いしのまき本の教室 「石巻日日こども新聞」のつくりかた text by 管理者

さる10月23日、旧観慶丸商店で第13回 いしのまき本の教室 「石巻日日こども新聞」のつくりかたが開催されました。
石巻まちの本棚で開催中の展示『「石巻日日こども新聞」1面に見る東日本大震災からの10年』の連動企画。

第1部は現役子ども記者やOBたちのトーク。聞き手はライターの南陀楼綾繁さん。
記者に参加したひとり八重樫さんは、「子ども新聞の活動がなかったら自分から人に話を聞きにいくこともなかった」といった感想をきかせてくれた。
こども新聞を卒業した今は、いろいろなデザインをおこなっている。取材をつうじてつながったアーティストたちとの交流が楽しかったとのこと。
子どものまち石巻で職業体験した際に新聞記者に興味を持った中学1年の千葉さん。自分なりにまとめて記事にしたり、知らない話題を深掘りすることの面白さを感じたそう。
中学2年生の阿部さんは、小学5年生の時に母の知り合いに誘われて子ども記者の活動が始まった。
兄弟で一緒に参加し、現在弟と連載をもっていて、宮城県にひろがるポケモンのマンホールのフタを取材しているそう。
中学1年の村松さんは、取材したいテーマを決めてから取材した人を決める。震災のときヘリで救助してくれた人を取材した。当時2歳で覚えていないが自分が体験したことを覚えていないからこそ取材したいと思ったそう。震災を知らない今の子どもたちに知って欲しいと特集記事をつくりました。

第2部はこども記者が先生になって参加者とワークショップ。
取材から記事作成までを計画する企画書づくりをこども記者とグループになって作成しました。
どんなテーマで記事を書き、どんな人に話しを聞きにいくかを皆で考えました。
グループディスカッションを経て、楽天球団で活躍するマーくんこと田中将大選手に話を聞く企画や、選挙に選ばれた政治家に話しを聞きにいき、人にメッセージを伝えるコツについて教わる企画などたくさん興味深い企画が生まれました。


第40号の発行をまもなくに控える「石巻日日こども新聞」
これまでの号の一面を石巻まちの本棚で展示する『「石巻日日こども新聞」1面に見る東日本大震災からの10年』は11月21日までの土日月曜で開催中です。ぜひこの機会に足をお運びください。

【第13回 いしのまき本の教室】
「石巻日日こども新聞」のつくりかた
10月23日(土)14時~16時
場所:旧観慶丸商店
出演 「石巻日日こども新聞」こども記者 現役+OB数名
八重樫 蓮さん(dgdgdgdg)
阿部 匠之介さん(渡波中学校2年生)
千葉 ふうなさん(石巻中学校1年生)
村松 玲里さん(蛇田中学校1年生)
聞き手 南陀楼綾繁(ライター・編集者)

2020.12.9 【文章教室】第10回いしのまき本の教室「ぼくは本と本屋さんが好き〜小さな出版社から見た本のゆくえ〜」 text by 本棚くん

第10回いしのまき本の教室にて開催した文章教室の作品を紹介します!
11月28日(土)に開講した本の教室は、ゲストに夏葉社島田潤一郎さんを迎え、トークイベントのあとに文章教室を開催しました。
参加者たちが持ち寄った文章(400-800字)を島田さんもしくは聞き手で編集者の丹治さんが読み上げ、アドバイスを加えるという会でした。
たくさんの素晴らしい作品が集まったこの文章教室の一部をここではご紹介します。ぜひ読んでみてください。
*著作権は作者に帰属します。

「うみねこ堂書林」MF

「ワンダリング・スター」 ハスキー

「天体に包まれて生きるわたし」 MN

toricorico

「まちの本屋の面影」 195

「28時の試験電波」 本郷映

すけさん

「保健室の先生もつらいよ」藤田南

「僕も本と本屋さんが好き」 bridge

「樹と語り合う」 N.K

「西條家」 さいじょうなるみ

「焼きバナナチップ」 A.F

2020.11.29 【レポート】第10回いしのまき本の教室「ぼくは本と本屋さんが好き〜小さな出版社から見た本のゆくえ〜」 text by かつ

第10回いしのまき本の教室が開催されました。
11月28日(土)に開講した本の教室は、ゲストに夏葉社島田潤一郎さんを迎え、多くのファンを生み出す本づくりの話を聞きました。聞き手には夏葉社の本も手がける編集者丹治さんと、石巻まちの本棚の吉田さん。第1部トークイベントはオンライン配信もされました。

島田さんがいしのまき本の教室に登場するのは4年ぶり。今期12年目を迎える夏葉社。ひとり出版社の先駆けとして、いまや本好きのあいだで知らない人がいない出版社です。本の編集経験がないなか、自分のため、そして仲のよかった従兄弟を亡くした叔父叔母を励ますために出版を始めた島田さん。これまで37冊刊行してきたそうです。

こうすれば仕事が続くという信念として、誰かがやりそうな仕事はやらないと決めているそう。
誰からも注目されるものではなく、地味だけども、良い本を出版することを目標にしているとのこと。
夏葉社を始めたときはスジのよいお客さんに評価されたかったが、続けていくにつれて変化してきたそうです。
「目をみえる範囲で喜んでくれる人に向けてつくっている」「本を手にとってくれた人をがっかりさせたくないという思いで作っている」という言葉には顔の見える誰かのために本づくりを続ける島田さんの誠実さが伝わってきました。
困難に出会った時のために本を読んできたのではないかという思いがあり、不満や不安があるときに自分を支えたのはあらゆる文化だった。そうした実感から、心の糧になるような本づくりをしたいという思いが夏葉社の根底にあると感じました。

10年やると本の作り方が安定してきたが、夏葉社としてやってきたことを一度崩して、ゼロからスタートした。それが新たなレーベル岬書店。そうした自己模倣せずに新たな本づくりにむかう島田さんの姿勢に、読者として大きな期待を持って聞いていました。

第二部は文章教室。
参加者12名が事前に準備した400〜800文字の原稿を島田さんもしくは、聞き手の丹治さんが読み上げたあとに、それぞれの感想やアドバイスを加えていきました。
参加者たちのつづる文章はどれも面白く、短編集を読むかのようにアドバイスをする島田さんも唸るような優れた表現の文章が多いと思いました。
本の教室ならではのこの光景。石巻の出版文化の発展の一助になればと思って始めましたが、この場にすでにたくさんの素晴らしい書き手がいることに、なんだかとてつもない可能性を感じました。

会の最後に、5年後にまたここで文章教室やりましょうと言ってくれた島田さん。
そんなこと言わずに来年もまた来てくださいね。

2019.5.28 【レポート】第7回いしのまき本の教室「出版社にできること」 text by 本棚くん

いしのまき本の教室「出版社にできること
いま子どもたちに大人気の「おしりたんてい」、長く子どもたちに愛読されている「かいけつゾロリ」など、主に子ども向けの本を出版し、なおかつ現在も大ヒット作を生み出しているのが株式会社ポプラ社さんです。そのポプラ社の社長である千葉均さんがなんと石巻のご出身…ということで、このたび石巻まちの本棚と縁がつながり、本の教室の講師として来ていただけることになりました。聞き手は信陽堂編集室/一箱本送り隊の丹治史彦さん。

今回は、まず千葉さんの石巻時代からポプラ社の社長になるまでの長い自己紹介からスタートです。

湊小入学・湊ニ小卒・湊中・石巻高校そして東京大学へ。理系で研究者志望でしたが方向転換して金融の世界へ就職。転職を経て独立しコンサルタント会社をされていましたが、モノを生み出す会社で貢献したいと考えていたところ、ポプラ社が財務担当者を探しているという話があり、二つ返事で入社したのが10年前。本好きではあったけれど、出版など考えたこともなかったそうです。これまで縁のなかった業界へ飛び込み、財務担当者としてポプラ社の経営を立て直し、3年前に社長に就任されました。

石巻のお話を…と話がむけられると、小中学校の時のことはあまり覚えていないのです…と恐縮されつつ、高校生活の話を伺いましたが、そのおぼろげな記憶の中でも、石巻高校の生徒心得綱領の3つのうちの最後の一つ「質實剛健新取獨創自ラ新運ヲ開拓スベシ」という言葉は、今でも強く胸に刻まれているそうです。これぞ「鰐稜」(石巻高校の地元での愛称です)精神!同窓の方は頷いていらっしゃる方も多いはず。

社会人になり、石巻を顧みることも無くなっていた千葉さんですが、転機はやはり東日本大震災。でも個人として石巻になにもできなかったという後ろめたい気落ちでいたところ、社長に就任した頃から不思議と石巻との縁がいくつも繋がります。その後は石巻出身として開き直り、ずっとなにかの形で石巻と関わりたいと思っていたそうでです。「今回素晴らしい機会を与えていただきましてありがとうございます!自分の中のわだかまりが少し溶けたかな…」と素直におっしゃられていたのが印象的でした。

今日も、たまたま本棚滞在中に「おしりたんてい」が売れたそうです。ポプラ社の本が売れているところを目にすると胸が熱くなって感動するという千葉さん。モノを作り出す会社の醍醐味ですね。スマートで穏やかな方なのですが、意外と情熱家なのですね。社長になったからには、子どもたちを少しでも幸せにしたい。一人でも多くの子どもたちに本を読んでもらいたいとのこと。

そして後半は出版社の経営、そして出版業界の構造改革の話になりました。

本は「再販制度」という独特の制度の下で流通しています。その特殊な商習慣についてわかりやすく説明していただきながら、これまで行ってきた自社の財務の立て直し、さらには出版業界全体の構造改革へと話が進みます。

出版社は取次と呼ばれる問屋さんに出荷した時点で「売上」となるのですが、後日書店で売れなかった本が返本されてくるとその分がマイナスになります。今やこの返本率が業界全体で平均40%程だそうで、これが出版社の経営、そして業界全体の効率を悪くしている原因の1つです。単純に返本を減らせば利益率が高くなるのは当然なのですが、業界の長年の習慣がそれを難しくしていたとのこと。

これまで全く別の業界にいたからこそ、経営者として出版業界の独特の経営方法に疑問を持ち、社員から反対されながらも、こうすればきっと良くなるという信念と「自ラ新運ヲ開拓スベシ」の精神を持ち、経営改革を進めてこられた千葉さん。こう書くと、バリバリの経営者をイメージするところですが、語り口はとてもやさしく穏やかなのです。

ポプラ社は、たくさんの子どもたちを本好きにすることを目指し、子どもたちが自ら手に取ってくれる本を作るという理念がありました。そのためには、社員がワクワクしながら本を作る会社にしたい。そして社員がハッピーになったその先は、苦しんでいる書店・運送業者・そして作家さんたちにも利益がまわるようにして、業界全体をハッピーにしたい。その構造改革のため、まだまだたくさんの構想もお持ちのようで、ここでも「開拓」の精神をみた思いがしました。

我々のお客様は子どもたち。子どもたちを幸せにしたい。みなさんには希望あふれる未来が待っているということを伝えたい…とおっしゃる千葉社長、そしてポプラ社の皆さんの熱い思いを、参加者みんなが受け止めたことと思います。あの「おしりたんてい」のヒットの裏には、こんな思いが詰まっていたとは!なんだかポプラ社さんの本がちょっと違って見えてきました。

いしのまき本の教室開始前に石巻日日子ども新聞の記者に取材される千葉社長

今回はこれまでになく「ビジネス」なお話でしたが、すっかりお話に引き込まれてしまいました。今もなお夢を持ってお仕事をされていて、静かな語り口からもワクワク感が伝わってきました。私たちまちの本棚も、子どもたちがワクワクして本を手に取ることのできる場として頑張ります!

帰り際、どんな本がお好きなのかお聞きしたところ、大人になってから節目節目で夏目漱石を通して読むのだそうです。その時々で印象が違うのだとか。漱石は大人になってからこそ読むべきだとも。なるほど。

そんな千葉さん、これからはちょくちょく石巻に帰ってきますおっしゃっていました。またのご来石お待ちしております。ありがとうございました!

(ら)

2017.3.22 【レポート】第5回いしのまき本の教室 地域雑誌にしかできないこと text by 本棚くん

全国から注目されている新潟の地域雑誌「LIFE-mag.」は、今回の講師、小林弘樹さんが一人で手掛けている雑誌です。
今回の本の教室のテーマは「地域雑誌にしかできないこと」。
雑誌作りの流れや取材の仕方などをお聞きしました。

まずは「LIFE-mag.」について。
最初に発行されたのは2008年のこと、新聞販売店に勤務していた小林さんが、
当時目にするタウン情報誌には登場しない人を探したい、もっといろんな生き方をしている人がいる!ということを伝え、表現したくて発行を決意。
それまで文章を書いたこともなく、右も左もわからないところから始めたというのには驚きました。いかに「これをやりたい!」という思いが大切かをひしひしと感じました。

「できた雑誌の営業はどうしたのか」
「取材の範囲が変わった理由は?」
「取材の中で軸となる人物を決断するのはどの段階か」
「雑誌の形になるまでの期間は?」
「雑誌だけで経済的にやっていけているのか」
など、実際の「LIFE-mag.」の記事を見ながらお話を伺っていきます。

スタートから1時間、休憩をはさんで後半のワークショップへ。
ワークショップのテーマは「自分がつくってみたい地域雑誌」です。
まずは参加者が持ってきた「自分の理想の雑誌」を紹介しつつ自己紹介。
その後以下5つの課題を各自考えます。考える時間は20分!

①エリアを決める
②テーマを決める(エリアの特徴を考える)
③タイトルを決める
④サイズ・ページ数は?
⑤雑誌に入る記事を3本考える

それぞれ黙々と課題に向き合い、ついに発表の時間が。
昔の話の聞き書き、北上川、子どもと本、建築、など、どれも読んでみたい!と思うプランばかりで、小林さんも身を乗り出して聞かれていました。

ひとりでは難しいと思っても、これだけのアイディアがあれば何人かで集まって1冊できるよね、と南陀楼さんからお話があったように、地域から掘り起こすテーマとそれを見つめる人にたくさんの可能性を感じた本の教室でした。

最後の質問は「地域雑誌をつくるにあたって、何を大切にしたらいいと思うか」でした。
「読者や取材する地域の方に、こちらの覚悟を見透かされていると思う。『本気度』が大切」
という小林さんの言葉がグサッと刺さりました。

第5回 いしのまき本の教室 
「地域雑誌にしかできないこと」
日時 2017年3月19日(土) 19:00-21:00(参加費1500円)
講師:小林弘樹(LIFE-mag)
聞き手:南陀楼綾繁(ライター、石巻まちの本棚)

2016.9.27 【レポート】第4回いしのまき本の教室『「出版」にできること』 text by かつ

石巻まちの本棚で貸本部門にて、バツグンの貸出し回数を誇る本がある。
「あしたから出版社」(島田潤一郎著/晶文社)
この本はひとり出版社として活動する夏葉社の島田さんが、出版社を立ち上げるまでの経緯や葛藤を書いたものだ。その包み隠さない物語と本を出版するという仕事の一端を垣間見ることもでき面白く、読みやすさも手伝ってまちの本棚ではお客さんやスタッフ間でも話題の著書だ。

この本を読み、次々と話題の本を出版する夏葉社島田さんにはずっとお会いしてみたいと思っていた。
まちの本棚を共同運営する一箱本送り隊に島田さんを紹介してもらい。東京神楽坂でお会いしたのは8月のはじめ。
震災直後の石巻にもボランティアで訪れ、木の屋さんの泥に浸かった缶詰を洗った話しもしてくれた。
とても気さくな方だった。石巻に来ていただくことも快く承諾してくれて今回の「本の教室」は実現した。

今回のテーマは「出版」。石巻で本に関わる仕事を増やしたいという目標をかかげ開始した「いしのまき本の教室」にドンピシャなテーマである。参加者は20名ほど。前半は南陀楼綾繁さんを聞き手に迎えた島田さんのトーク。

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今回のテーマである出版に関して、夏葉社の仕事を通じて話してもらう。
驚きは島田さん自身本を読む事に関して、苦手意識があるらしい。
本は読むのには力がいるし、時間はかかるし、場所がいる。1ヶ月読んだ場合でも何が残るかわからない。と話す島田さんの言葉に共感した参加者も多いはずだ。
そんな島田さんだからこそ、多くの読者に支持されるような本づくりができているのだろうと妙に納得した。

「移動図書館ひまわり号」や「レンブランドの帽子」など話題の本を復刊するのも夏葉社の仕事のひとつ。
復刊は復刻とは違う。絶版になった本を当時の姿かたちのままそのまま出版することが復刻。
復刊は本の姿かたちを変える。場合によってはタイトルだって変えることもある。
島田さんはまず文字の組み方を変える。1ページあたりの文字数を減らすと読みやすくなるが、当然ページ数は増え本の価格にダイレクトに反映される。そのあたりの取捨選択が出版社の仕事だ。
出版社には旬を見極める力というものも重要で、何を夏葉社として「今」選んで出版するかも熟考するという。
復刊にあたり構成や章立てを変えたり短くして、文字数を減らすことだってあるのだそうだ。
出版にいたるまでの権利関係の整理や交渉、新しくつくる装丁の依頼や販路の確保も出版社の仕事だ。

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あらためて島田さんのやっていることを考えるとそれは編集の仕事でもあり、出版社の仕事でもあり、作家の仕事でもあったり営業の仕事でもあったりする。
本をつくるという仕事の川上から川下まで一貫して担っているような存在だ。
違うのは島田さん自身がひとりで川上から川下まで本の仕事を担うことで、体得した本づくりに対する解像度なんだと思う。
販売目標の冊数を、5年かけてどうやって売るのかを考え、全国の書店員たちの顔を浮かべながら出版する。
まだ見ぬ読者たちにどうやって届けるかを考えながら、この販売目標を達成する。
当然、取り次ぎは回らず書店という現場で働く担当者とひとりひとり会いにいくという営業スタイルだ。
そうした地道で丁寧な本づくりは、夏葉社という出版社の最大特徴であり、沢山の本好きたちを魅了している。

後半は参加者たちとのワークショップ。
「自分の理想の本」を1冊、参加者たちが持ち寄り紹介、次にその本が絶版になったという仮定で、20年後くらいの先の未来にどうやって復刊するかを考えた。
参加者たちはご家族の本棚からセレクトしたもの、ずっと思い入れがある本、こどもたちに読んで欲しい本など様々なジャンルの本を持ち寄っていた。

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本として美しい装丁に変化させたり、本のサイズを変えてみたり、
詩の編成を厳選し、ページ数を少なくしたりと様々なアイデアが飛び出した。
どれも夏葉社の本づくりに発想を島田さん自身もハッと気づかされることが多いと言っていたのが印象的だった。

モノとしての本が美しいということも、また本の内容と同じくらいに重要だと島田さんは言った。
本を出版し続けることのやりがいや、苦しさが伝わった内容だった。
かつて石巻には出版社が何社もあったようだ。まちの本棚のあるこの場所にかつてあった「たん書房」も書店でありながらも地域に関わる出版物の発行も手がけていた。
出版というなりわいは地域にとっては切っても切れない
先日なにかの取材に答えた時に「本力」なる言葉が口をついた、その時はなんだか勢いで言っちゃったなと思ったが、本が持っている不思議な縁をつなぐ力や、何かを後押しする力、そうした諸々の本がもつ力を総じて「本力」と言ってみたのだった。最近はそんな「本力」みたいなものはあるんだなと実感している。
本から力をもらった人は必ず本に対して恩返しをする。こうして本に関わる仕事は失くならないんじゃないかと思ったりしている。
苦しいながらもやりがいがある本を出版するという仕事。
石巻にもそんな仕事を引き受ける人たちが、自然とまた増えるといいなと強く思った「本の教室」だった。

(勝 邦義/石巻まちの本棚)

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第4回 いしのまき本の教室 
「出版」にできること
日時 2016年9月24日(土) 19:00-21:00(参加費1500円)
講師:島田潤一郎(夏葉社)
聞き手:南陀楼綾繁(ライター、石巻まちの本棚)

2016.6.28 【レポート】第3回いしのまき本の教室「これからの本屋のしごと」 text by 猫ぱち

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当日直前まで、予約が少なくちょっとハラハラしましたが、実際に古本屋さんを始めるという方、なんか面白そうだからという方など総勢20名くらいの方が参加してくださいました。

まずは自己紹介からお話いただき、なぜ本の世界に興味を持ったのかをお聞きしました。
拾った雑誌がきっかけで本の面白さに目覚めたという上野さん。
まったく興味がない雑誌だったそうですが何気なくパラパラめくっているうちに、カッコいい!と感じる写真ページに遭遇。自分の知らない世界を教えてくれるところに惹かれたそうです。

そして最初は公務員だったという上野さんが、なぜ本を売る仕事をするようになったか、「古書水の森」オープンまでのお話へ。
東京で公務員をしていましたが、自分には合わないと感じ仕事を辞め、仙台にもどってきたのが20代半ばのこと。
最初は、レコードやCD、音楽に関する本をヤフオクやアマゾンに出品してみたところ面白いように売れたそう。
それから、放浪しながら仕入れては売る、という生活をしばらく続ける日々の中、生活拠点を構えたいと思うようになり仙台に落ち着く。
その後地元の先輩と組んだり、放浪したり、また人と組んで別れてを経て、本格的に古書組合に入り2014年3月「古書 水の森」開業に至ったそうです。

上野節がさく裂する中、南陀楼綾繁さんに軌道修正していただき具体的なしごとのお話に。
・火曜日と金曜日が集荷日。土、日は仕入れに東京へ。
・午前中は朝イチで東京のフリーマーケットを物色→10~11時~ 古本屋めぐり
一度の仕入れで段ボール5~10箱になるそうです。

~上野さんの本の仕入れのルール~
・せどり(掘り出しものを販売して利益を稼ぐこと)して出たもうけ分は本を買ったところで使う。
・得意分野の本だけでなく、広い分野の本を扱う。相場などわからない本はよく調べる。
・戦いにいくつもりで、真剣勝負で行く!
・競りの時は、攻めるけれど火傷しない程度に、という冷静な目を持つ
・好きな言葉「今も戦国時代だけど、殺されないだけマシ」
古書組合の先輩が話していたそうで、不安な時や迷った時にその言葉を思い出すと勇気が出るそうです。

対面販売と違って少ない情報だけで販売されるオンラインでは、どういうことに気を付けるのか?情報の出し方は?という質問には、
気を付けているのは、古本に慣れていない人もいるので、状態はちょっと悪く書くこと。
本人の意識では、「オンラインだから」ということはなく、実店舗で売っていると同じ感覚なのだそうです。

トークの後は「値付けワークショップ」です。
参加者お一人2冊をまちの本棚の蔵書から選んでいただき、それぞれの感覚で値段をつけて発表し、上野さんにコメントをいただくというものです。
お一人お一人の本の解説と、付けた値段の理由を聞かせてもらうとどの値段も納得してしまい、上野さんも感激されていました。
ここで選んだ本は、そのまままちの本棚で販売されます。一箱古本市の出店の面白さも体験できるワークショップになったと思います。

上野さんのちょっとユルそうな話し方にうっかりしてしまいますが、仕入れの時の挑む姿勢から、「好き」や「趣味」ではできない仕事だと知らされつつも、本に対する愛情を根底に感じるお話で、まちの本棚のスタッフとしても刺激をいただいた「本の教室」でした。
(店長)

本の教室・トーク 本の教室・ワークショップ

第3回 いしのまき本の教室  
「これからの本屋のしごと」
日時:2016年6月25日(土)18:30-20:00
講師:上野好之さん(古書 水の森)  
聞き手:勝邦義さん(石巻まちの本棚)

2015.5.13 【レポート】いしのまき本の教室:ブックカフェのはじめかた text by 本棚くん

「いしのまき 本の教室」第1弾「ブックカフェのはじめかた」は、仙台のブックカフェ「火星の庭」の前野久美子さんを講師にお迎えして5月9日に開催されました。
参加者は21名、地元の方以外にも、仙台、丸森、東松島、福島の方もいらっしゃって、「火星の庭」と前野さんの威力をあらためて思い知らされました!

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第一部は、前野さんがブックカフェを始めたいきさつからスタート。「火星の庭」の運営を例にして「ブックカフェを生業とすること」を、具体的な数字を交えながらお話してくださいました。
あまりに具体的なので経営の難しさを実感でき、いやぁまいったなー!という気分になりましたが、軽々とお話する前野さんにどんどん引き込まれていきました。

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そして近頃のブックカフェブームに嫌気がさし?海外の本屋めぐりをした時のお話へ。
ニューヨークと台湾でめぐった本屋さんを紹介しながら、刺激をうけた様子を大いに語ってくださいました。純粋に「本」に出会い楽しめる場所、街、人々をいきいきと感じられるお話でした。最後に前野さん「ブックカフェをやろうと思っている人は台湾の本屋に行け!」

ふたたび経営の話に戻り、ブックカフェといっても、さまざまなスタイルがあること、都会と地方ではやりかたが違ってくること、などのお話から「大切なのは自分がどうしていきたいのかのイメージをしっかり持つこと」ということで、第二部のワークショップに突入です!

第二部のワークショップはテーマが2つあり、まずは作りたいお店のイメージをワークシートに記入するところから。
ワークシートには、「お店の立地は?」「本は何冊?」「お客さんは何人?」など細かい質問が並び、最後は「ブックカフェの見取り図」を書きます。ただしここでは、あくまで理想100%で書くこと。実際はない条件でOKということで、みなさん自由に書き込んでいました。
20分ほどかけて書いたワークシートをテーブルに並べ、今度はそれぞれ、行ってみたいと思ったシートに投票していきます。一人3つ投票するのですが、時間が少なくなかなか難しかったですが楽しい作業でした。印が多かった上位3名の方にはくわしく発表していただきました。
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ワークショップ2つ目は「模擬値付け体験」。今回の講座では、「もしブックカフェをひらいた時、本棚に並べたい本」を一冊持って来ていただきました。それを全部並べて、各自「欲しい!」と思う本の落札価格を書いた紙を、本の上に置いた封筒に入れます。「実際は一瞬だからね!一瞬!」・・・と言われても。実際の入札には、とても及びませんが、どんなしくみで古本を落札するのか、楽しく体験させていただきました。

今回の参加者の中には、実際にブックカフェの準備をすすめている方が何人かいらっしゃって、講座後の打ち上げも熱く盛り上がったのでした。
今後、いろんな所に、本のある個性的なスペースが増えて行くような期待が感じられ、嬉しい日にもなりました。

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