まちの本棚だより

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2019.5.28 【レポート】第7回いしのまき本の教室「出版社にできること」 text by 本棚くん

いしのまき本の教室「出版社にできること
いま子どもたちに大人気の「おしりたんてい」、長く子どもたちに愛読されている「かいけつゾロリ」など、主に子ども向けの本を出版し、なおかつ現在も大ヒット作を生み出しているのが株式会社ポプラ社さんです。そのポプラ社の社長である千葉均さんがなんと石巻のご出身…ということで、このたび石巻まちの本棚と縁がつながり、本の教室の講師として来ていただけることになりました。聞き手は信陽堂編集室/一箱本送り隊の丹治史彦さん。

今回は、まず千葉さんの石巻時代からポプラ社の社長になるまでの長い自己紹介からスタートです。

湊小入学・湊ニ小卒・湊中・石巻高校そして東京大学へ。理系で研究者志望でしたが方向転換して金融の世界へ就職。転職を経て独立しコンサルタント会社をされていましたが、モノを生み出す会社で貢献したいと考えていたところ、ポプラ社が財務担当者を探しているという話があり、二つ返事で入社したのが10年前。本好きではあったけれど、出版など考えたこともなかったそうです。これまで縁のなかった業界へ飛び込み、財務担当者としてポプラ社の経営を立て直し、3年前に社長に就任されました。

石巻のお話を…と話がむけられると、小中学校の時のことはあまり覚えていないのです…と恐縮されつつ、高校生活の話を伺いましたが、そのおぼろげな記憶の中でも、石巻高校の生徒心得綱領の3つのうちの最後の一つ「質實剛健新取獨創自ラ新運ヲ開拓スベシ」という言葉は、今でも強く胸に刻まれているそうです。これぞ「鰐稜」(石巻高校の地元での愛称です)精神!同窓の方は頷いていらっしゃる方も多いはず。

社会人になり、石巻を顧みることも無くなっていた千葉さんですが、転機はやはり東日本大震災。でも個人として石巻になにもできなかったという後ろめたい気落ちでいたところ、社長に就任した頃から不思議と石巻との縁がいくつも繋がります。その後は石巻出身として開き直り、ずっとなにかの形で石巻と関わりたいと思っていたそうでです。「今回素晴らしい機会を与えていただきましてありがとうございます!自分の中のわだかまりが少し溶けたかな…」と素直におっしゃられていたのが印象的でした。

今日も、たまたま本棚滞在中に「おしりたんてい」が売れたそうです。ポプラ社の本が売れているところを目にすると胸が熱くなって感動するという千葉さん。モノを作り出す会社の醍醐味ですね。スマートで穏やかな方なのですが、意外と情熱家なのですね。社長になったからには、子どもたちを少しでも幸せにしたい。一人でも多くの子どもたちに本を読んでもらいたいとのこと。

そして後半は出版社の経営、そして出版業界の構造改革の話になりました。

本は「再販制度」という独特の制度の下で流通しています。その特殊な商習慣についてわかりやすく説明していただきながら、これまで行ってきた自社の財務の立て直し、さらには出版業界全体の構造改革へと話が進みます。

出版社は取次と呼ばれる問屋さんに出荷した時点で「売上」となるのですが、後日書店で売れなかった本が返本されてくるとその分がマイナスになります。今やこの返本率が業界全体で平均40%程だそうで、これが出版社の経営、そして業界全体の効率を悪くしている原因の1つです。単純に返本を減らせば利益率が高くなるのは当然なのですが、業界の長年の習慣がそれを難しくしていたとのこと。

これまで全く別の業界にいたからこそ、経営者として出版業界の独特の経営方法に疑問を持ち、社員から反対されながらも、こうすればきっと良くなるという信念と「自ラ新運ヲ開拓スベシ」の精神を持ち、経営改革を進めてこられた千葉さん。こう書くと、バリバリの経営者をイメージするところですが、語り口はとてもやさしく穏やかなのです。

ポプラ社は、たくさんの子どもたちを本好きにすることを目指し、子どもたちが自ら手に取ってくれる本を作るという理念がありました。そのためには、社員がワクワクしながら本を作る会社にしたい。そして社員がハッピーになったその先は、苦しんでいる書店・運送業者・そして作家さんたちにも利益がまわるようにして、業界全体をハッピーにしたい。その構造改革のため、まだまだたくさんの構想もお持ちのようで、ここでも「開拓」の精神をみた思いがしました。

我々のお客様は子どもたち。子どもたちを幸せにしたい。みなさんには希望あふれる未来が待っているということを伝えたい…とおっしゃる千葉社長、そしてポプラ社の皆さんの熱い思いを、参加者みんなが受け止めたことと思います。あの「おしりたんてい」のヒットの裏には、こんな思いが詰まっていたとは!なんだかポプラ社さんの本がちょっと違って見えてきました。

いしのまき本の教室開始前に石巻日日子ども新聞の記者に取材される千葉社長

今回はこれまでになく「ビジネス」なお話でしたが、すっかりお話に引き込まれてしまいました。今もなお夢を持ってお仕事をされていて、静かな語り口からもワクワク感が伝わってきました。私たちまちの本棚も、子どもたちがワクワクして本を手に取ることのできる場として頑張ります!

帰り際、どんな本がお好きなのかお聞きしたところ、大人になってから節目節目で夏目漱石を通して読むのだそうです。その時々で印象が違うのだとか。漱石は大人になってからこそ読むべきだとも。なるほど。

そんな千葉さん、これからはちょくちょく石巻に帰ってきますおっしゃっていました。またのご来石お待ちしております。ありがとうございました!

(ら)

2018.12.14 【レポート】ちいさな出版物の設計図を作るワークショップ text by 本棚くん

第6回目となる「いしのまき本の教室」は、前回の本の教室から約1年半ぶりの開催となりました。
講師は、ライターで編集者の南陀楼綾繁さん。今回の「ちいさな出版物の設計図を作るワークショップ」は全国各地で開催している人気の講座ですが、石巻では初めてです。
内容は、本や雑誌をつくること、やってみたいけどどうすれば最初の一歩が踏み出せるか判らない、という人たちの「入り口」となるような講座で、作りたいイメージを形にしてみる、いわゆる「ラフ」を作ってみるというものでした。

石巻だけでなく県外の方からの申込みもあり、定員を超える参加が!「本を作りたい」という方が多いことに驚きました。
ほぼ時間通りに始まり、まずは講座についての説明があり、続いて参加された方の自己紹介、参加の動機、持参した好きな本について話していただきました。
作りたいものは、旅行記、日記、活動を紹介するもの、今作っているものを良くしたい、好きなものについて熱く紹介したい・・・などなど既に読んでみたいと思わせるものばかり。


そして、南陀楼さんが集めたフリーペーパーや冊子を、アドバイスを含めながら紹介していくのですが、次から次へと紹介される本は、様々なスタイルやテーマを持って作られ、どれも熱い想いや勢いがあってついじっくり読んでしまいました。また、継続して作られているということも印象的でした。
さていよいよ後半1時間で、実際に各自「ラフ」作りに入ります。
・どのような形にするか?(1枚、冊子、袋雑誌etc.)
・有料or無料?
・縦書きor横書き?
・サイズは?
・タイトルは?
・テーマは?
・内容は?
を基に、手を動かしながら考えていきました。
残り10分くらいから発表。みなさん最初にお話いただいたものよりも、作りたいイメージやテーマが広がり、楽しそうに発表されていました。
ところで石巻まちの本棚のスタッフには、実は南陀楼さんより課題が出ていました。スタッフ1組になって、「まちの本棚の活動を伝える本」を考えるのです。
結果、
・日頃のまちの本棚の活動を伝えたら?
・まちの本棚をもっと知ってもらい、足を運んでもらいたい
・個性的なスタッフの顔が見えるようなものに
・本を様々な角度で紹介したい
・いろいろなお店やスペースに置いてもらいたいetc.
ということで、「まちの本棚新聞」を発行するという方向になり、ひろぴ画伯のすばらしいラフによりさらにがっつりとハードルを上げてしまった本棚チームでした。

今回の講座は、様々な表現方法があり、作り手の想いや、人となりが直に伝わるような「ちいさな出版物」に改めてワクワクしました。表現て何なんだろうなんて思っていても、沢山のちいさな出版物や、参加された方のこういうものが作りたいという楽しそうな空気に触れていると、どんどん垣根がなくなっていくような感覚になります。
取りあえず勢いでも作ってみること、楽しいや好きから始めてみること、続けること、この本の教室などを通して共通して教わるこれらは、最近やっと身体でわかってきました。

そんなことで、第2回目のちいさな出版物の設計図を作るワークショップをぜひやりたいと思った次第です。

第6回いしのまき本の教室
ちいさな出版物の設計図を作るワークショップ
講師 / 南陀楼綾繁さん
日時 / 2018年12月7日(金)18:30-21:00
場所 / 石巻まちの本棚
参加費 / 2500円(材料費含む)
参加者 / 13名
持ち物 / 自分の好きな雑誌、リトルプレス、フリーペーパーなど1冊。筆記具。

2018.8.17 【レポート】早川ユミさんちくちくワークショップ text by 本棚くん


今年で2回目となる早川ユミさんのちくちくワークショップ
石巻、仙台、登米、古川などから14名参加くださいました。

今回も、当日のお昼に石巻に到着、そのままワークショップの準備に入られるというタイトなスケジュールだったユミさん。
前日は、石巻では「石巻一箱古本市」、参加された店主さんがまちの本棚に立ち寄ってくださったり終始にぎやかでしたが、スタッフの方がバテ気味でした(笑)。

ワークショップは、ほぼ時間通りにスタート。
ユミさんが用意してくださった布の中からそれぞれ好きな布と、糸と針もお借りして、自分が使いやすいものを選びました。
見本のバッグは思ったよりも大きなバッグで、布を折り紙のように折って形を作ります。
縫う場所は4か所。今回の目玉?は、布どうしをはぎ合わせたところの刺繍です。色糸をひたすら巻き縫いしていくのですが、みなさん早くその部分を刺したくてウズウズしているようでした(笑)。
ユミさん曰く、「石巻の方は、手が早い!説明しなくてもどんどん進んじゃうのよね(笑)」

手を動かしながら、まずはユミさんの本のお話から。
今まで書かれた本を1冊1冊紹介しながら、今感じていることやお弟子さんとの暮らしなどで再確認したことなどを話してくださいました。
ユミさんが大切なこととして話されたなかで心に残ったことばは
・「豊かさ」とは、「つくる」こと
・美しく暮らすこと
・火を焚くこと
・親以外の大人と出会うこと
・会いたい人にはどんどん会いに行こう(アポイントはとること!)
その他、お弟子さんがどうしたら自分を表現できるようになるか、「自分の仕事」を生み出すことができるか模索しているというのは身につまされました。


後半は、参加者の自己紹介と、ユミさんの本の感想など自由に話す時間です。そして「得意料理」がリクエストでした。
ユミさんの話を聞いて思い出したこと、向き合っていること、取り組んでいる仕事のことなど、参加されたそれぞれの方の胸の内がちょっとずつ語られていくのは、ちくちくしながらのおかげなのでしょうか。
お題の「得意料理」は、みなさんあったりなかったりでしたが、「得意料理は、家族との暮らしのなかでできていくから大丈夫」の言葉に、日々のご飯の大切さと楽しさを思い出しました。


ワークショップで完成した作品のひとつです。

ワークショップが落ち着いたのは、結局18時すぎ。
惜しまれつつの散会でした。
石巻でのワークショップは、長いスパンで考えていると言ってくださったユミさん。
こうして石巻に心を寄せてくださることに感謝しています。

今年は、なんと石巻の3人の作家とのコラボレーション展も実現してくださいました。
作品が送られてくるまで、どのような作品になっているのかわかりませんでしたが、箱を開けた時の感動は忘れられません。
ユミさんがどのように作品をつくられるのか、現場に行ってみたい!と思いました。

(店長)

【早川ユミさんちくちくワークショップ】
「縄文ポシェットをつくる」
2018年7月29日(日) 15:00〜17:00
場所  石巻まちの本棚

2018.8.3 石巻一箱古本市2018 開催レポート text by 本棚くん

去る7月28日(土)に石巻一箱古本市2018が開催されました。
今年は32店舗が出店し、石巻まちなかに1日だけの本屋さんが出現しました。


今年の会場は中心市街地のアイトピア通りおよび橋通りに集中させ、店主さんとの密なコミュニケーションをお客さんが楽しめるようにしました。

毎年開催しているスタンプラリーでは、地元のあっぷるじゃんぷの子供たちの作品をスタンプに。
全てのスタンプを集めた方には景品として素敵なポストカードがもらえました。

新たに会場に加わったのは2箇所。
そのひとつ石巻市指定文化財旧観慶丸商店では8店舗の一箱出店に加えて、つれづれ団による「古本縁日」が開催されました!
やぐらが組まれた「本のやぐら」に加え、本の射的、本の釣りなど本を使った楽しい縁日の雰囲気が観慶丸に広がりました。

もうひとつの新会場、橋通りCOMMONがパワーアップした「COMMON-SHIP 橋通り」では8店舗が出店。
同会場では地元作家による美術展「分岐展」も開催されており、飲食店とともににぎわいをつくりだしていました。

石巻商工信用組合の軒先では8店舗が横に並んで出店。
こちらもたいへんな盛り上がりをみせていました。
途中スタンプラリーのスタンプを作ってくれた子供たちも登場し、スタンプを押してくれました!

IRORI石巻では6店舗が出店。家具工房である石巻工房が梱包材をつかったオリジナルのバックづくりワークショップをおこないました。

カンケイマルラボの軒先には2店舗と仙台から移動販売書店ペンギン文庫が駆けつけてくれました。

そして石巻まちの本棚では「早川ユミさんのちくちく展」を開催。

16時の終了後は旧観慶丸商店で表彰式。
毎年皆勤賞だったライターの石井ゆかりさんは今年は残念ながら欠席でしたが、今年も石井ゆかり賞は健在。
売り上げた本の冊数が一番多かった「ションボリーBooks」が受賞しました。
賞品の素敵なレターセットに大感激。そのほかの受賞者は以下。

・石井ゆかり賞
ションボリーBooks

・石巻工房賞
蛇田のほんやさん

・ISHINOMAKI2.0賞
マト文庫

・一箱本送り隊賞
葉っぱ屋

今年は助っ人も充実。事前の準備作業が多かったのですが、たくさんの方が関わってくれたことに新たな広がりを感じました。

最後は店主さんたち助っ人さんたちで記念写真をパシャリ。
ご参加いただいた皆様、まことにありがとうございます!
来年もここでお会いできることを楽しみにしています。

2017.9.12 【レポート】早川ユミちくちくツアー2017 「ちいさな展らん会とたねまきワークショップ」 text by 本棚くん

東北で2回目の早川ユミさんのワークショップ。「昨年の仙台でのワークショップにどうしても参加できずがっかりしていたのが,今年は地元石巻で行われるなんて夢のよう・・」と話してくださる方や,遠く県外からも参加される方もあり,20人近い女性たちの「ユミさんに会いたい!」という,熱気ムンムンのスタートとなりました。

今回の「たねまきワークショップ」は,胸当てエプロンとカフェエプロンから選べるように,ひももポケットもたくさん準備していただきました(こちらからのお願いに何か月も悩まれたそうです。すみません・・)。カフェエプロンは,石巻オリジナルと聞いて,そちらを選ばれる方もいました。

さっそく手アイロンで布の端を三つ折りにするところから始まりました。たたみを敷いてなんとかお座りいただいた狭い会場でしたが,お隣さんと仲良しの距離になったようです。

そして,ユミさんのお話です。まずは,これまで出された8冊もの本について,その頃のエピソードと共に紹介していただきました。ユミさんの本には,くらすこと(生きること)の様々なたねが詰め込まれているように思います。子育てのこと,ちくちくのこと,旅のこと,食のこと,体のこと・・。お住まいの高知の山のてっぺん谷相の,さらに,旅をしたアジアの人々のくらしが,鮮やかな色合いと美味しいに匂いとともに伝わってきました。
ときおり,参加された方の赤ちゃんをあやす優しい声とふぎゃあというという泣き声に,ユミさんは「胸がぎゅっとしますね~」と応えてくれます。私も,我が子をだっこしていた頃を思い出しました。
ユミさんのお話の後は,参加者一人一人のお話です。「○○を頑張っています。」「〇〇という気持ちで参加しました。」という自己紹介に,ユミさんは,自分の経験や,その人に寄り添った励ましの言葉を一人一人にかけてくれます。「聴いてもらう」ということが,ふと気がつくと,今はなんと少なくなってしまっていることでしょう。自分の話を大切に受け止めて,「温かい言葉」で返してくれるユミさん・・とても豊かな時間となりました。

  

同じ材料から始まったエプロンですが,行きすぎたら角を曲がって戻ってきたり,お隣さんを見て,糸の色を変えてみたり,糸が短くなったら玉どめのワンポイントを入れたりと,ちくちく,ちくちく,ちくちく・・手の進むまま,話の進むまま,一人一人すてきなたねまきエプロンとなりました。
最後は,できあがったエプロンをして参加者みなさんで記念撮影をしました。ユミさんが何度も話していた,「日々,女の人が自分のできることをちくちくとして,それがつながっていけば,世の中を平和にするはず」という種は,参加者の皆様の胸に,あるときぷっくりと芽を出し,力強く励ましてくれることでしょう。
「また,石巻で」と,ユミさんからうれしいお声がけをいただき,この次も楽しく豊かな時間にしていけたらと思います。石巻に温かな眼差しを向けてくださるユミさん,だんな様の小野哲平さんに深く感謝します。
(koma)

2017.7.25 【レポート】第6回石巻一箱古本市2017 text by 本棚くん

7月22日(土)石巻の中央商店街各所を会場にして「石巻一箱古本市2017」in STAND UP WEEKが開催されました。
2012年からはじまる石巻一箱古本市も今年で5年、なんと6回目の開催を迎えました。はやいものです。
今年は石巻はもとより全国から34店舗の一箱店主さんが集まりました。
遠くは京都や名古屋から。石巻からの出店者さんも着実に増えて、毎年楽しみにして来てくれる方も増えました。
着実に浸透してきているんだと思います。

今年の会場は12か所、一箱店主さんに加えて移動式書店の「ペンギン文庫」さんも仙台から駆けつけ、石巻まちの本棚では「玉葱展」と石巻出身の作家大島幹雄さんによる「デラシネ通信」書店が出展しました。


今年は「リボーンアート・フェスティバル」という石巻を中心に51日間にわたち開催される食と芸術と音楽の祭典の開幕日でもありました。
石巻のまちなかには古本市を目指してきてくれたお客さん。アート・フェスティバルを目的に訪れたまたま古本市に出会った人たちなど、様々な人たちで賑わいました。

仮設商店街の会場がなくなり、新たなに加わった会場も。


秋田屋さんは石巻が誇る100年ちかい古民家。リボーンアート・フェスティバルの会場にもなっていました。


ことぶき町商店街のでんき屋さん「パナックけいてい」もリボーンアート・フェスティバルの会場のひとつ。


まちの本棚のおとなり「カンケイマルラボ」さんでの開催は意外にも今回がはじめて。


石巻ASATTEは昨年11月に完成したばかりの複合施設。


昨年にひきつづき石巻に駆けつけてくれたペンギン文庫さん。松川横丁に本屋さんが出現しました。。


今年のスタンプは版画家のあるがあくさんによるもの


スタンプラリーの景品は素敵な「かきにゃ〜」缶バッチ。美術家のはまちひろさんによるものでした。

石巻のひとつの夏の風物詩になりつつある一箱古本市。
今年は天気の心配もありましたが、奇跡的に開催時間中は天気も持ってくれて無事に終えることができました。


古本市後、会場をiRORI石巻に移して開催された表彰式もおおいに盛り上がりました。

南陀楼綾繁さんのふりかえりのあとは各賞の発表です。


石井ゆかりさん賞は毎年一番の本を手渡した出店者に送られます。
今年は地元石巻から3名の女性で出店していた「一箱堂」さんに。46冊をお客さんに売りました。


一箱本送り隊賞は「波まち BOOKs」 南陀楼さんを唸らせるセレクトでした。

石巻まちの本棚賞は「ヨーダ古書堂」
特製の猫の人形をお買い上げの方にはまさかのわらべ歌のプレゼント。残念ながら表彰式はご欠席。。

そして恒例の集合写真。毎年一層の盛り上がりを見せる石巻一箱古本市では、集合写真を撮るのもひと仕事。

今年も皆様ありがとうございました!

2017.3.22 【レポート】第5回いしのまき本の教室 地域雑誌にしかできないこと text by 本棚くん

全国から注目されている新潟の地域雑誌「LIFE-mag.」は、今回の講師、小林弘樹さんが一人で手掛けている雑誌です。
今回の本の教室のテーマは「地域雑誌にしかできないこと」。
雑誌作りの流れや取材の仕方などをお聞きしました。

まずは「LIFE-mag.」について。
最初に発行されたのは2008年のこと、新聞販売店に勤務していた小林さんが、
当時目にするタウン情報誌には登場しない人を探したい、もっといろんな生き方をしている人がいる!ということを伝え、表現したくて発行を決意。
それまで文章を書いたこともなく、右も左もわからないところから始めたというのには驚きました。いかに「これをやりたい!」という思いが大切かをひしひしと感じました。

「できた雑誌の営業はどうしたのか」
「取材の範囲が変わった理由は?」
「取材の中で軸となる人物を決断するのはどの段階か」
「雑誌の形になるまでの期間は?」
「雑誌だけで経済的にやっていけているのか」
など、実際の「LIFE-mag.」の記事を見ながらお話を伺っていきます。

スタートから1時間、休憩をはさんで後半のワークショップへ。
ワークショップのテーマは「自分がつくってみたい地域雑誌」です。
まずは参加者が持ってきた「自分の理想の雑誌」を紹介しつつ自己紹介。
その後以下5つの課題を各自考えます。考える時間は20分!

①エリアを決める
②テーマを決める(エリアの特徴を考える)
③タイトルを決める
④サイズ・ページ数は?
⑤雑誌に入る記事を3本考える

それぞれ黙々と課題に向き合い、ついに発表の時間が。
昔の話の聞き書き、北上川、子どもと本、建築、など、どれも読んでみたい!と思うプランばかりで、小林さんも身を乗り出して聞かれていました。

ひとりでは難しいと思っても、これだけのアイディアがあれば何人かで集まって1冊できるよね、と南陀楼さんからお話があったように、地域から掘り起こすテーマとそれを見つめる人にたくさんの可能性を感じた本の教室でした。

最後の質問は「地域雑誌をつくるにあたって、何を大切にしたらいいと思うか」でした。
「読者や取材する地域の方に、こちらの覚悟を見透かされていると思う。『本気度』が大切」
という小林さんの言葉がグサッと刺さりました。

第5回 いしのまき本の教室 
「地域雑誌にしかできないこと」
日時 2017年3月19日(土) 19:00-21:00(参加費1500円)
講師:小林弘樹(LIFE-mag)
聞き手:南陀楼綾繁(ライター、石巻まちの本棚)

2016.11.26 7次元ナカムラクニオさんトークライブ「まちと本棚」 text by 本棚くん

山形ビエンナーレから巡回し、石巻まちの本棚にやってきた7次元の世界。

東京は荻窪、bookcafe6次元の店主であるナカムラクニオさんの本棚は、まるで映画の世界。興味深い主役たちと、それを引き立てる脇役たち。たまに現れる名脇役のおかげで主役たちはより魅力的に感じられる。と、思いきや、その脇役がなんだか愛おしく思えたり。

毎週店番をしても見飽きる事のなかったこの本棚を作る、ナカムラクニオさんは一体どんな方なのだろう。そんな思いで迎えた11月13日。「まちと本棚」というテーマで約2時間半お話していただきました。

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まず、トークが始まると同時に、皆さんに渡された一冊の冊子。

中に描かれていたのは、山形県の様々な場所を舞台にした短編小説。思わずその場所に足を運びたくなるようないくつかの物語です。

ナカムラさんが最初にお話して下さったのが、「小説を書くワークショップ」について。この冊子もナカムラさんが、山形の芸術工科大学の生徒と共に作られた本だそうです。

内容は簡単。名前の通り、ナカムラクニオさんと一緒に小説を書いてみよう。というワークショップ(以下WS)です。ペンと紙さえあればできるこのWS、今では、高校の修学旅行に組み込まれることもあるそうです。

身近な人、場所を題材にすると、より身近に感じられて面白い。例えば、まちの本棚のスタッフがもしも家族だったら。とか。ちょっとの変化で周りの環境が面白い小説になるそう。

<一度書くと読み方が変わる>この言葉を聞いて、ほう、私も書いてみようかしら。と思いました。

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そこから、6次元で開催されたイベントを沢山教えていただきました。

•本のシーンに合わせて、音楽を流したり御飯をだしたりする「朗読会」

•キャンドルを灯し、3時間程本を読んだりする「断食ナイト」

•お米の食べ比べをする「お米ナイト」

•金継ぎWS

•他人と深い話をする会

など、興味深く参加してみたいイベントばかり。今では週の半分はイベントが企画されているそうです。

そして、イベントを企画するときに行っているという「やらないことをリスト化する」ということ。普段の生活の中ではなかなかできないようなことをリスト化し、それをイベントにしてみんなでやってみよう!と企画に繋げるそうです。先月から、「足湯読書会」を始めたまちの本棚としては、耳をダンボにして聞いておきたいところ。いざ考えてみると、やりたいと思っていても、やらないことって本当に沢山あって、そして意外と些細なことが日常に追われてできていなかったりする。そんなことを気付かされるだけでも「やらないことをリスト化する」ということは大切なことだと思った。

そして、中盤から、「今の石巻に必要なものは?」という内容で会場にきていた22名のお客様1人1人とのトークセッション。

・農家さんや漁師さんを繋ぐ仲介人のような人

・飲食店や観光地など情報が集結している冊子、WEBサイトなど

・夜遅くまでやっている飲み屋、本屋

・地域の人が集まるようなワークショップ

・石巻の歴史、昔話などのお話会

など、22名の今の石巻に対する思いを聞かせていただきました。

「今の石巻に必要なもの」について。今回のトークイベント、22名の方にご参加いただいたのですが、その内の8割の方は県外から石巻に移住されている方々。とても嬉しい気持ちと、石巻の人が極端に少ないというなんだか複雑な気持ち。今の石巻に必要なものは、県外から来られた方たちに石巻の魅力を知ってもらう。というよりも、もしかしたら石巻の人に今の石巻の魅力を知ってもらう。ということが必要なのかもしれない。

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今回のお話を聞いて、本と人、まちはいつからか距離が離れてしまったのだと思った。テレビの普及や様々な娯楽が増え、人は本を読むという時間を設けなくなってきているのだろう。けれども、本棚という空間には無限の可能性があって、その場所を提供しイベントを企画することによって、本と人という存在を再び繋ぐことができる。今まで本に興味がなかった人にも、イベントを通して、場所、本を知ってもらえる。面白い企画がなかったらその場所に行かないというのもどうかと思うが、本棚に足を運ぶひとつのキッカケになれば、と思う。

ナカムラさんのトークは実に潔く、聞き終わった後、爽快感と清々しさのようなものが残った。この爽快感を忘れぬうちに、まちの本棚と石巻の人を繋げるイベントを考えたい。

(ひろぴー)

2016.9.27 【レポート】第4回いしのまき本の教室『「出版」にできること』 text by かつ

石巻まちの本棚で貸本部門にて、バツグンの貸出し回数を誇る本がある。
「あしたから出版社」(島田潤一郎著/晶文社)
この本はひとり出版社として活動する夏葉社の島田さんが、出版社を立ち上げるまでの経緯や葛藤を書いたものだ。その包み隠さない物語と本を出版するという仕事の一端を垣間見ることもでき面白く、読みやすさも手伝ってまちの本棚ではお客さんやスタッフ間でも話題の著書だ。

この本を読み、次々と話題の本を出版する夏葉社島田さんにはずっとお会いしてみたいと思っていた。
まちの本棚を共同運営する一箱本送り隊に島田さんを紹介してもらい。東京神楽坂でお会いしたのは8月のはじめ。
震災直後の石巻にもボランティアで訪れ、木の屋さんの泥に浸かった缶詰を洗った話しもしてくれた。
とても気さくな方だった。石巻に来ていただくことも快く承諾してくれて今回の「本の教室」は実現した。

今回のテーマは「出版」。石巻で本に関わる仕事を増やしたいという目標をかかげ開始した「いしのまき本の教室」にドンピシャなテーマである。参加者は20名ほど。前半は南陀楼綾繁さんを聞き手に迎えた島田さんのトーク。

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今回のテーマである出版に関して、夏葉社の仕事を通じて話してもらう。
驚きは島田さん自身本を読む事に関して、苦手意識があるらしい。
本は読むのには力がいるし、時間はかかるし、場所がいる。1ヶ月読んだ場合でも何が残るかわからない。と話す島田さんの言葉に共感した参加者も多いはずだ。
そんな島田さんだからこそ、多くの読者に支持されるような本づくりができているのだろうと妙に納得した。

「移動図書館ひまわり号」や「レンブランドの帽子」など話題の本を復刊するのも夏葉社の仕事のひとつ。
復刊は復刻とは違う。絶版になった本を当時の姿かたちのままそのまま出版することが復刻。
復刊は本の姿かたちを変える。場合によってはタイトルだって変えることもある。
島田さんはまず文字の組み方を変える。1ページあたりの文字数を減らすと読みやすくなるが、当然ページ数は増え本の価格にダイレクトに反映される。そのあたりの取捨選択が出版社の仕事だ。
出版社には旬を見極める力というものも重要で、何を夏葉社として「今」選んで出版するかも熟考するという。
復刊にあたり構成や章立てを変えたり短くして、文字数を減らすことだってあるのだそうだ。
出版にいたるまでの権利関係の整理や交渉、新しくつくる装丁の依頼や販路の確保も出版社の仕事だ。

第4回本の教室01

あらためて島田さんのやっていることを考えるとそれは編集の仕事でもあり、出版社の仕事でもあり、作家の仕事でもあったり営業の仕事でもあったりする。
本をつくるという仕事の川上から川下まで一貫して担っているような存在だ。
違うのは島田さん自身がひとりで川上から川下まで本の仕事を担うことで、体得した本づくりに対する解像度なんだと思う。
販売目標の冊数を、5年かけてどうやって売るのかを考え、全国の書店員たちの顔を浮かべながら出版する。
まだ見ぬ読者たちにどうやって届けるかを考えながら、この販売目標を達成する。
当然、取り次ぎは回らず書店という現場で働く担当者とひとりひとり会いにいくという営業スタイルだ。
そうした地道で丁寧な本づくりは、夏葉社という出版社の最大特徴であり、沢山の本好きたちを魅了している。

後半は参加者たちとのワークショップ。
「自分の理想の本」を1冊、参加者たちが持ち寄り紹介、次にその本が絶版になったという仮定で、20年後くらいの先の未来にどうやって復刊するかを考えた。
参加者たちはご家族の本棚からセレクトしたもの、ずっと思い入れがある本、こどもたちに読んで欲しい本など様々なジャンルの本を持ち寄っていた。

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本として美しい装丁に変化させたり、本のサイズを変えてみたり、
詩の編成を厳選し、ページ数を少なくしたりと様々なアイデアが飛び出した。
どれも夏葉社の本づくりに発想を島田さん自身もハッと気づかされることが多いと言っていたのが印象的だった。

モノとしての本が美しいということも、また本の内容と同じくらいに重要だと島田さんは言った。
本を出版し続けることのやりがいや、苦しさが伝わった内容だった。
かつて石巻には出版社が何社もあったようだ。まちの本棚のあるこの場所にかつてあった「たん書房」も書店でありながらも地域に関わる出版物の発行も手がけていた。
出版というなりわいは地域にとっては切っても切れない
先日なにかの取材に答えた時に「本力」なる言葉が口をついた、その時はなんだか勢いで言っちゃったなと思ったが、本が持っている不思議な縁をつなぐ力や、何かを後押しする力、そうした諸々の本がもつ力を総じて「本力」と言ってみたのだった。最近はそんな「本力」みたいなものはあるんだなと実感している。
本から力をもらった人は必ず本に対して恩返しをする。こうして本に関わる仕事は失くならないんじゃないかと思ったりしている。
苦しいながらもやりがいがある本を出版するという仕事。
石巻にもそんな仕事を引き受ける人たちが、自然とまた増えるといいなと強く思った「本の教室」だった。

(勝 邦義/石巻まちの本棚)

第4回本の教室02

第4回 いしのまき本の教室 
「出版」にできること
日時 2016年9月24日(土) 19:00-21:00(参加費1500円)
講師:島田潤一郎(夏葉社)
聞き手:南陀楼綾繁(ライター、石巻まちの本棚)

2016.6.28 【レポート】第3回いしのまき本の教室「これからの本屋のしごと」 text by 猫ぱち

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当日直前まで、予約が少なくちょっとハラハラしましたが、実際に古本屋さんを始めるという方、なんか面白そうだからという方など総勢20名くらいの方が参加してくださいました。

まずは自己紹介からお話いただき、なぜ本の世界に興味を持ったのかをお聞きしました。
拾った雑誌がきっかけで本の面白さに目覚めたという上野さん。
まったく興味がない雑誌だったそうですが何気なくパラパラめくっているうちに、カッコいい!と感じる写真ページに遭遇。自分の知らない世界を教えてくれるところに惹かれたそうです。

そして最初は公務員だったという上野さんが、なぜ本を売る仕事をするようになったか、「古書水の森」オープンまでのお話へ。
東京で公務員をしていましたが、自分には合わないと感じ仕事を辞め、仙台にもどってきたのが20代半ばのこと。
最初は、レコードやCD、音楽に関する本をヤフオクやアマゾンに出品してみたところ面白いように売れたそう。
それから、放浪しながら仕入れては売る、という生活をしばらく続ける日々の中、生活拠点を構えたいと思うようになり仙台に落ち着く。
その後地元の先輩と組んだり、放浪したり、また人と組んで別れてを経て、本格的に古書組合に入り2014年3月「古書 水の森」開業に至ったそうです。

上野節がさく裂する中、南陀楼綾繁さんに軌道修正していただき具体的なしごとのお話に。
・火曜日と金曜日が集荷日。土、日は仕入れに東京へ。
・午前中は朝イチで東京のフリーマーケットを物色→10~11時~ 古本屋めぐり
一度の仕入れで段ボール5~10箱になるそうです。

~上野さんの本の仕入れのルール~
・せどり(掘り出しものを販売して利益を稼ぐこと)して出たもうけ分は本を買ったところで使う。
・得意分野の本だけでなく、広い分野の本を扱う。相場などわからない本はよく調べる。
・戦いにいくつもりで、真剣勝負で行く!
・競りの時は、攻めるけれど火傷しない程度に、という冷静な目を持つ
・好きな言葉「今も戦国時代だけど、殺されないだけマシ」
古書組合の先輩が話していたそうで、不安な時や迷った時にその言葉を思い出すと勇気が出るそうです。

対面販売と違って少ない情報だけで販売されるオンラインでは、どういうことに気を付けるのか?情報の出し方は?という質問には、
気を付けているのは、古本に慣れていない人もいるので、状態はちょっと悪く書くこと。
本人の意識では、「オンラインだから」ということはなく、実店舗で売っていると同じ感覚なのだそうです。

トークの後は「値付けワークショップ」です。
参加者お一人2冊をまちの本棚の蔵書から選んでいただき、それぞれの感覚で値段をつけて発表し、上野さんにコメントをいただくというものです。
お一人お一人の本の解説と、付けた値段の理由を聞かせてもらうとどの値段も納得してしまい、上野さんも感激されていました。
ここで選んだ本は、そのまままちの本棚で販売されます。一箱古本市の出店の面白さも体験できるワークショップになったと思います。

上野さんのちょっとユルそうな話し方にうっかりしてしまいますが、仕入れの時の挑む姿勢から、「好き」や「趣味」ではできない仕事だと知らされつつも、本に対する愛情を根底に感じるお話で、まちの本棚のスタッフとしても刺激をいただいた「本の教室」でした。
(店長)

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第3回 いしのまき本の教室  
「これからの本屋のしごと」
日時:2016年6月25日(土)18:30-20:00
講師:上野好之さん(古書 水の森)  
聞き手:勝邦義さん(石巻まちの本棚)

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