まちの本棚だより

2016.11.26 7次元ナカムラクニオさんトークライブ「まちと本棚」 text by 本棚くん

山形ビエンナーレから巡回し、石巻まちの本棚にやってきた7次元の世界。

東京は荻窪、bookcafe6次元の店主であるナカムラクニオさんの本棚は、まるで映画の世界。興味深い主役たちと、それを引き立てる脇役たち。たまに現れる名脇役のおかげで主役たちはより魅力的に感じられる。と、思いきや、その脇役がなんだか愛おしく思えたり。

毎週店番をしても見飽きる事のなかったこの本棚を作る、ナカムラクニオさんは一体どんな方なのだろう。そんな思いで迎えた11月13日。「まちと本棚」というテーマで約2時間半お話していただきました。

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まず、トークが始まると同時に、皆さんに渡された一冊の冊子。

中に描かれていたのは、山形県の様々な場所を舞台にした短編小説。思わずその場所に足を運びたくなるようないくつかの物語です。

ナカムラさんが最初にお話して下さったのが、「小説を書くワークショップ」について。この冊子もナカムラさんが、山形の芸術工科大学の生徒と共に作られた本だそうです。

内容は簡単。名前の通り、ナカムラクニオさんと一緒に小説を書いてみよう。というワークショップ(以下WS)です。ペンと紙さえあればできるこのWS、今では、高校の修学旅行に組み込まれることもあるそうです。

身近な人、場所を題材にすると、より身近に感じられて面白い。例えば、まちの本棚のスタッフがもしも家族だったら。とか。ちょっとの変化で周りの環境が面白い小説になるそう。

<一度書くと読み方が変わる>この言葉を聞いて、ほう、私も書いてみようかしら。と思いました。

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そこから、6次元で開催されたイベントを沢山教えていただきました。

•本のシーンに合わせて、音楽を流したり御飯をだしたりする「朗読会」

•キャンドルを灯し、3時間程本を読んだりする「断食ナイト」

•お米の食べ比べをする「お米ナイト」

•金継ぎWS

•他人と深い話をする会

など、興味深く参加してみたいイベントばかり。今では週の半分はイベントが企画されているそうです。

そして、イベントを企画するときに行っているという「やらないことをリスト化する」ということ。普段の生活の中ではなかなかできないようなことをリスト化し、それをイベントにしてみんなでやってみよう!と企画に繋げるそうです。先月から、「足湯読書会」を始めたまちの本棚としては、耳をダンボにして聞いておきたいところ。いざ考えてみると、やりたいと思っていても、やらないことって本当に沢山あって、そして意外と些細なことが日常に追われてできていなかったりする。そんなことを気付かされるだけでも「やらないことをリスト化する」ということは大切なことだと思った。

そして、中盤から、「今の石巻に必要なものは?」という内容で会場にきていた22名のお客様1人1人とのトークセッション。

・農家さんや漁師さんを繋ぐ仲介人のような人

・飲食店や観光地など情報が集結している冊子、WEBサイトなど

・夜遅くまでやっている飲み屋、本屋

・地域の人が集まるようなワークショップ

・石巻の歴史、昔話などのお話会

など、22名の今の石巻に対する思いを聞かせていただきました。

「今の石巻に必要なもの」について。今回のトークイベント、22名の方にご参加いただいたのですが、その内の8割の方は県外から石巻に移住されている方々。とても嬉しい気持ちと、石巻の人が極端に少ないというなんだか複雑な気持ち。今の石巻に必要なものは、県外から来られた方たちに石巻の魅力を知ってもらう。というよりも、もしかしたら石巻の人に今の石巻の魅力を知ってもらう。ということが必要なのかもしれない。

20167ŽŸŒ³ƒg ーク・3トーク7-2・ドリンクメニュー

今回のお話を聞いて、本と人、まちはいつからか距離が離れてしまったのだと思った。テレビの普及や様々な娯楽が増え、人は本を読むという時間を設けなくなってきているのだろう。けれども、本棚という空間には無限の可能性があって、その場所を提供しイベントを企画することによって、本と人という存在を再び繋ぐことができる。今まで本に興味がなかった人にも、イベントを通して、場所、本を知ってもらえる。面白い企画がなかったらその場所に行かないというのもどうかと思うが、本棚に足を運ぶひとつのキッカケになれば、と思う。

ナカムラさんのトークは実に潔く、聞き終わった後、爽快感と清々しさのようなものが残った。この爽快感を忘れぬうちに、まちの本棚と石巻の人を繋げるイベントを考えたい。

(ひろぴー)

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